政党CNRT、タウル=マタン=ルアクの支持決定
来日したジョゼ=ラモス=オルタ大統領、いよいよ風前の灯か
青山森人
e-mail: aoyamamorito@yahoo.com
任期満了近し、ジョゼ=ラモス=オルタ大統領が来日
東チモールのジョゼ=ラモス=オルタ大統領が1月18日〜21日に来日し、東日本大震災の被災した宮城県仙台東高校を訪問し生徒を激励したり、緒方貞子JICA理事長や法政大学の長谷川祐弘教授(東チモールで展開された国連組織の元代表)と会ったり、そして眼帯した野田首相とも会談したりしました。
大統領にはゴンサルベス経済開発大臣とカルロス外務副大臣が同伴しました。ゴンサルベス経済開発大臣といえば、ラモス=オルタ大統領が2008年1月13日、つまり「2.11」で撃たれる前の月、武装反乱兵士を率いるアルフレド少佐とマウビシで会談を非公開で行ったとき同席した閣僚です。なぜこの大臣がこの秘密会談に同席するのか…?当時わたしはずいぶんこの大臣の存在と役割に興味を抱いたものです。ラモス=オルタ大統領とゴンサルベス大臣は近しい関係にあるのかもしれません。
また、現在日本に駐在する二代目東チモール大使であるイジリオ=コエリョさんは(現政権のエネルギー庁長官であるチモール社会党のアベリーニョ=コエリョさんの弟、インドネシア占領時代に日本留学の経験あり)、ラモス=オルタ大統領の秘蔵子といわれています。自分の秘蔵子が大使として日本で立派にやっていることを確かめ、首脳会談も行い、宮城県を訪れ被災者を勇気づける人道活動をおこなったラモス=オルタ大統領は、しばし浮き世を忘れたことでしょう。
揺れているのかな?「ノーベル平和賞」受賞者は
その「浮き世」とは何か?大統領の地位が任期満了で残りわずかであるものの再選される可能性が低いという現実です。
ラモス=オルタ大統領は次期大統領選挙に出馬するかしないか、まだ公式に態度を表明していませんが、情勢を見極めて勝てるならば出馬宣言をするつもりであることは確かです。
大統領選挙に立候補するであろう人たちの多くは、勝算を度外視して政党あるいは個人の存在感を示すのが主な目的としているフシがあります。そうしておけば、大統領選挙後に実施される総選挙への良い下ごしらえになるし、総選挙の結果をうけて発足する新政権のなかで好い地位を得られるかもしれないからです。
しかしラモス=オルタ大統領ともなれば存在感はすでにあるので、存在感をアピールするための選挙に挑む必要はありません。負けた場合のことを考えていることでしょう。つまり「ノーベル平和賞」受賞者が落選したという負のイメージが国際社会に流れることを心配しているはずです。東チモール民族解放軍の参謀長で国防軍司令官だったタウル=マタン=ルアクさんが次期大統領候補として有力視される情勢のなかで、体面を重んじるラモス=オルタ大統領としては落選覚悟で敢えてタウルさんに挑戦できないことでしょう。しかし不出馬も出馬もまだ公表していないところ見ると、ラモス=ホルタ現職大統領は内心まだ揺れているのかもしれません。実際、わたしの得た情報では、態度を表明してはいないもののラモス=オルタ陣営は立候補届出の準備はしているとのことです。現職大統領はいつ決断を下すか、注目したいところです。
ラモス=オルタ大統領と野田首相、その地位がより風前の灯にあるのはどちらか?日本の首相は官僚・財界の鎧を身につけ、居直って居座ることができるので、今年3月17日が投票日といわれる選挙が目の前に控えているラモス=オルタ大統領よりは、延命できる術をもっています……。
拡大するタウルさんへの支持
そのラモス=オルタ大統領の再選がさらに遠のいたようです。1月18日、シャナナ=グズマン首相率いる連立政権の第一党であるCNRT(東チモール再建国民会議)が、タウルさんを大統領候補として推すことを正式決定し、政党CNRTとタウル陣営は調印を交わしたのです。
タウルさんは去年、出馬表明する以前から政党指導者たちと会談を重ね、譲れない原則を説いてきました。その原則とは、自分は政党から独立した存在であること、です。したがって政党からの支援は歓迎するが、条件付きならば支援は受けない、総選挙で発足する政権がいかなる政党から成る政府であっても良好な関係を築く、という立場です。
政党幹部は、なんとかして次期大統領有力候補であるタウルさんを取り込み、政治的影響力を強めたい思惑があります。与党第一党CNRTも最大野党フレテリンもそうです。
どこまで組織的な陰謀が絡んでいるのか、わたしはよく知りませんが、タウルさんを誹謗中傷する動きもあります。タウルさんは野心家だとか、無知だとか、裏切り者だとか、差別を造りだしているとか……。
こうした動きに屈せず、タウルさんは政治的関係や合意を交わそうとする政党の申し入れを拒否し続けています。政党CNRTは最終的にタウルさんの原則を受け入れ、党としてタウルさんを支持することになったのです。
フレテリンのル=オロ党首はタウルさんとは尊敬し合う間柄ですが、フレテリンはタウルさんを支持してはいけないと党員に伝えたり、支持する見返りに党旗を使うようタウルさんに求めたりしたという話もあります。もしこれが事実ならば、フレテリンは情けない政党になったものだといわざるを得ません。
しかし同じフレテリンであっても一般党員は別です。大多数の党員、とくに若い人たちはタウルさん支持で行動しています。いやいや、一般党員だけではありません。地方の党執行部や元大臣を務めた人物たちでさえタウルさん支持で動いています。
フレテリンとしてはル=オロ党首を大統領候補にたてて大統領選挙を戦うことでしょうが、こうした党内情ならば、ちぐはぐな大統領選挙になり、フレテリンにとって政権奪回はさらに厳しくなりそうです。
タウルさん出馬表明によって悩ましい環境にさらされているのは、ラモス=オルタ大統領だけではなさそうです。
〜次号へ続く〜

